2025年4月の法改正では、「確認申請が必要な建物が増えた」「省エネ法が適合義務化された」など厳しくなる点が多かった印象です。しかし、
ちょっとだけ嬉しい“緩和ポイント”もあります!
それが、木造建築における構造設計ルールの緩和です。
この記事では、以下の2つのポイントを中心に、
- 許容応力度計算で建てられる“高さ”の範囲が広がったこと←緩和ポイント!
- 壁量や柱の小径の算定方法が合理的に見直されたこと
について、試験にも実務にも使えるようやさしく解説していきます◎
最後に注意すべき「経過措置」の対象建物も整理しているので、建築士試験を受ける方も、木造住宅の設計に携わる方も、ぜひチェックしてみてください!
※ この記事では、色分けする場合、改正前・改正後の違いがパッとわかるように
改正前の内容を青色、改正後の内容を赤色で表記しています。
(図表部分は国交省資料の色に準じているため、全体が統一されていないこともありますがご了承ください)
高さ制限の緩和|許容応力度計算で建てられる建物が増えた
2025年4月からの法改正で、色々と厳しい基準となって辛いところに朗報です◎
木造建築の“設計しやすさ”がちょっとだけパワーアップします。 ポイントは大きく2つ。
改正前後の比較(高さ13m&軒高9m以下 → 16m&3階以下)
これまで、木造で許容応力度計算を使って設計できるのは「高さ13m以下&軒高9m以下」まで、って決まってたんだけど、 今回の改正でその制限が少しゆるくなりました。

重要なのはここ↓
- 改正前:高さ13m以下、軒高9m以下
- 改正後:高さ16m以下、階数3以下までOKに!
つまり、階高がちょっと高めの木造建築でも、 許容応力度計算で対応できる=構造設計がグッと楽になるってことです。
二級建築士が設計できる範囲への影響

しかもこの緩和、二級建築士が設計できる範囲にも関わってくるから、 小規模事務所とか住宅設計やってる人にはけっこう大事な改正です。
住宅でやれることの範囲が広がるのは素敵なことですね😊
壁量計算・柱の小径の合理化|「軽い屋根・重い屋根」からの脱却
壁量(耐力壁の必要量)の出し方もアップデートされてます。
試験では具体的な計算を問われるほどではないはずなので、数式に関しては「そうなんだ~」と見ておく程度でいいと思います。
荷重と階高に応じた合理的な計算式へ

改正法制度説明資料」

改正法制度説明資料」
これまでのやり方って、
- 「屋根が軽い/重い」で分ける
ということだったのですが、これからは
- 建物がどのくらい重いのか、どれくらい階高があるのかに応じて、 必要な柱や壁が“計算式”で割り出せるようになる
というイメージです。
自動計算ツール(木材技術センターExcel)の紹介
日本住宅・木材技術センターから表計算ツール(エクセル)も提供されていて、 必要な数値を入力すれば、自動で柱の太さや壁の必要量が出る仕組みになっています。

入力方法はこんな感じで説明してくれてます↑
ためしにGoogleのスプレッドシートでも開いてみましたが、問題なく使えそうです◎
(吹き出し部分がちょっとゆがんでしまうところはありますが)
試験に出る?実務でどう対応すべき?―改正前後のポイント整理
項目 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
許容応力度計算の適用範囲 | 高さ13m以下・軒高9m以下 | 高さ16m以下に緩和(階数3以下) 二級建築士の設計範囲拡大 |
壁量・柱の小径の算出 | 屋根の軽重などによる区分 | 荷重・階高に応じた計算式へ |
整理するとこのような感じです。

壁量や柱の小径の話で「軽い屋根・重い屋根でわける」みたいな文言で書かれてたら「誤」と判断してOKってことやね。



主事試験では計算させられたりもするらしいけど、一級の試験ではそこまで出ないかな。
実務の方へ補足:経過措置についてまとめ
令和7年度の1年間は旧基準でもOK?―壁量基準・柱の小径に関する「経過措置」
壁量(令第46条)と柱の小径(令第43条)の見直しについては、実は令和7年4月〜令和8年3月末までの1年間、経過措置が用意されています。


改正法制度説明資料」
経過措置の対象となる建物について—「審査不要」と勘違いしないための注意点
- 地階を除く階数が2以下
- 高さ13m以下かつ軒高9m以下
- 延べ面積が300㎡以内
この条件に当てはまる木造建築物であれば、改正前の壁量基準・柱の小径の算定方法を使って設計することが可能です。
ただ、この経過措置を使って“旧基準で設計”したとしても、 構造に関する審査は省略されません。
つまり、これまでは4号特例によって構造チェックが省略されていた部分が、令和7年4月以降はすべて審査対象になります。
→ 「旧基準を使える」≠「審査されない」なので要注意。
設計図書の内容は、旧基準ベースで構成できるものの、確認申請での構造審査は普通に行われます。
まとめ|実務者・受験者が押さえるべき3つの視点
今回の法改正で行われた「木造建築の構造ルール見直し」は、
一見すると“緩和された”という印象を受けがちですが、実際には性質の異なる2つの変更が同時に含まれています。
ここでは、実務・試験どちらにも関係する視点から、特に押さえておきたい3つのポイントを整理します。
- 許容応力度計算で建てられる木造建築の高さが13m → 16m/3階までに拡大
- 二級建築士が関われる建物の幅も広がる可能性があり、住宅・事務所設計では実務上の恩恵が大きい
- 「軽い屋根・重い屋根」で判断する旧方式から、荷重や階高に応じた定量的な判断へ
- 安全性をより的確に判断するルールへ進化したものなので、“緩くなった”と誤解しないことが重要
- 令和7年4月〜8年3月までの1年間は、旧基準で設計できる建物もあるが、
- 構造審査そのものは省略されないため、「4号特例時代と同じようにやればいい」は通用しない
これらの改正点は、一級建築士試験の出題範囲としても実務上の設計判断としても、
“どの建物に、どの基準が、いつ適用されるのか”を見極める目を問われている内容でもあります。
法改正を「覚えるもの」としてではなく、「建築をどう変えるか」という視点で捉えると、試験対策としても頭に入りやすくなりますよ◎
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
今回の改正は、「厳しくなった部分」と「設計しやすくなった部分」が入り混じっていて、
ちょっとややこしいな〜と感じた方も多いかもしれません。
でも、
- 高さ制限の緩和で設計の幅が広がったこと
- 壁量・柱の算定方法が合理的になったこと
- 経過措置の落とし穴に注意すべきこと
といったポイントを押さえておけば、試験にも実務にもきっと役立つ知識になるはずです◎
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ではでは、お疲れさまでした〜!
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